1・破瓜の封印

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飛んでいた本が床に降る。 だが本が当たっても、英知は、動かなかった。 「フン。まだ腹の虫が納まらねぇな」 少年が再び手をかざす。 「やめて!」 ピクンと手を止め、少年がゆっくり日和を見る。 「もう、いいでしょう?」 (さむい……) 声が震える。 それは、少年に対する恐怖からではない。 「どうして、こんなことをするの? どうしてみんなを──」 その先にある言葉が、怖いから。 「殺すのか、って?」 日和がビクンと体を震わせるのを見て、少年は口端を吊り上げた。 「簡単なことさ」 少年は日和のそばに来ると、手首を掴んで後ろの壁へ押し付けた。 そして、耳元でささやく。 「楽しいからさ。恐怖に震える声、命乞いする姿。飛び散る鮮やかな血、悲鳴と苦痛で歪む顔。──ゾクゾクする」 少年は陶酔するように目を細めた。 ドクンッ…… 心臓が大きく震え、凍てつき止まった気がした。 (さむい……) 「そんな──」 「そんな? そんな、なんだ。ひどいことを、とでも抜かすのか?」 少年の顔に怒りの感情が出る。 「他人の非には容赦ないくせに、自分の非には言い訳を並べ立てて悪くないとうそぶく。そんな薄っぺらいお前らが、俺の何を責められる?」
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