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自分の右手を見つめる。
微弱な電気は体を小刻みに震わせて止まらない。
指先が、血を失うように冷たくなっていくのがわかる。
だが、どうしてそうなるのか、わからない。
「お前は、何者だ?」
全身に鳥肌が立つ。
誰かが両手で心臓を掴んでいる──そんな感覚に息苦しさとめまいを感じる。
「なんなんだよ。
俺は、何をしてるんだ」
言い知れぬ不安と恐怖が口をつく。
「何故、ためらう?」
その問いに、心の奥底にある闇が答えを出す。
『迷うことなど、何もない』
「そうか……殺せばいいんだ」
『いつものように、血を撒き散らせばいい』
「そうすれば、楽になれる」
『愉しい時間を過ごせるぞ?』
体の周りで風が起こる。
少女に向けて右手を伸ばし、手のひらに作り出した紅い空気の渦を光の弾に変える。
「死……」
バンッ!
「な──」
『なんだと!?』
思わず目を見開く。
放った光は、少女の黒髪をかすめ、壁に割れ目を入れて霧消していた。
「何故!」
『どうして外れた?』
ぐらりと少女の体が揺れ、その場に崩れる。
「!!!?」
死んだのか、と思った。
が、胸元がかすかに上下している。
「気絶……か」
ホッと息を吐く。
『安堵、だと!?』
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