1・破瓜の封印

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目を見開く。 「俺が、か?」 『何故だ。何故安堵した!』 「俺が、殺さなかったことに安堵している、だと!?」 『何を考えている!』 「何も……何も考えてなどいない。ただ、」 『ただ?』 「ただ──」 『もっと、いたぶって殺したいのか? 命乞いをさせたいのか?』 「…………」 なんだろう。 この、言い知れぬ不安は。 『早く殺せ。でなければ、またお前は自由を失うぞ? 邪魔なものは排除しろ。それとも、再び、あの暗闇に戻りたいか?』 体を取り巻く空気が冷え、スッと気持ちが楽になる。 自然と、口元に笑みが浮かぶ。 少女へと手を伸ばす。 「人間など、もろいものだ」 禍々しい手に血管が浮き上がる。 「特に女の細い首など、潰すも折るも、造作ない」 だが。 少女の、ほんのりとやわらかく温かな肌に触れた途端、得体の知れない何かに体を押さえつけられて動けなくなった。 「!!?」 指先から全身に電気が走り、心までもがしびれて思考が鈍る。 力が、入らない。 呼吸すら、難しいほどに。 『何をしている』 「なにも」 『何をためらう』 「ためらう?」 『何を、恐れている?』 「恐れてなど、いない」 怖いものなどない。 ただ…… 『お前は、なんだ?』
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