1・破瓜の封印

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破片から少女をかばい、窓の縁を蹴って跳ぶ。 体を翻し、家と納屋の間にあるトラクターのアームの上に立って振り返る。 太陽は、林の向こうに落ちようとしていた。 ピクンと視線を移す。 ここからは見えないが、重そうに走る車の音に眉根を寄せ、地面に降りた。 辺りを一瞥し、納屋の脇を走り抜けて畑を横切る。 小さな川を飛び越え、林の中へ。 『どうするつもりだ?』 いぶかる声を無視して、ヤチダモや白樺、それに松の混じる林の中を風のように走る。 足下に生い茂る熊笹のガサガサという音が、やけに大きく感じた。 『何を考えている?』 「うるさい」 短い林の切れ目で、体を低くし足を止める。 目だけを動かし、注意深く辺りを見渡し、あらゆる生き物の気配を探る。 「……よし」 小さくつぶやき、狭い農道を渡る。 夕日の届かなくなりつつある木々の間を、ひたすら走り続ける。 ──どれくらい走っただろうか。 熊笹も木々もない、広い場所に出た。 歩調を緩め、目の前のものを見つめる。 「ここは……?」 民家が、あった。 だが、人の臭いも気配もない。 手前にある小さな畑には、雑草が生えていた。 そばに立つ木造の納屋は、崩れるのも時間の問題と思えるくらい古い。
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