1・破瓜の封印

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月明かりが作り出した白い聖域と、その光の聖櫃で眠る少女。 綺麗だと、思った。 素直に、ただ素直にそう思った。 心が、震える。 それは、これまでに感じたことのない感情だった。 先刻までとは違う、不思議な感覚。 怖くは、ない。 不安も、ない。 白い世界が、 こんなに温かいとは、 知らなかった。 心地よいめまいが起きる。 体の中にたまっていた重たい空気を吐き出す。 身体が、浮いてしまいそうなほど、軽い。 これなら、一緒に飛べる──少女に手を伸ばす。 『それは、まやかし』 「うわっ!」 指先が少女に触れた途端、再び全身に電気が走る。 体の奥底に潜んで蠢く闇から、稲妻がほとばしる。 激しい痛みに顔を歪め、転がるように部屋の奥の暗がりへ逃げる。 『ほら、だから言ったのだ』 闇がニヤリと嗤う。 『あれは、お前から自由を奪うもの』 膝をかかえ、震える体を縮める。 『あれは、お前に苦痛を与えるもの』 少女を睨み、唇を噛みしめる。 『そうだ。そうなのだ』 闇の声が甘くささやく。 『あれは、邪魔なものなのだ。 葬り去れ……いや、だが触れてはいけない』 生暖かな闇が心を撫でる。 『まやかしを吐き出すあれを、消し去れ!』
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