1・破瓜の封印

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怨言ではない。 雅で、美しい言の葉の響き。 紡ぎ出される音に、月が力を与えるのか。 或いは、秘められた力を呼び覚ますのか。 一層強い光を放つ月明かりを受け、目を閉じて立ちすくむ。 やがてゆっくりと視線を下ろし、家へ歩き出す。 地を蹴り、ひらりと二階の窓に跳んで部屋に戻った。 少女は──まだ眠り続けている。 傍らに腰を下ろし、白い寝姿を見つめる。 そこにはもう、先刻までの心の乱れも尖った感情もない。 不安はない。 恐れもない。 心の中は、真っ白だった。 月明かりに照らされた少女は、本当に綺麗だった。 白い肌、優しい目元に薄紅色の唇、そして細い首筋には、銀色の鎖が輝いていた。 それらすべてが清らかで、触れがたい。  それでも。 触れがたいと、感じても。 触れてはいけないものだと、わかっていても。 両手を少女に伸ばす。 電気は、走らない。 やわらかな頬を撫で、美しくなだらかな線を確認するように、顔から首筋へと指を滑らせる。 少女の肌や着ているブラウスは、清麗な月明かりの下、降り積もったばかりの雪に似てまぶしい。
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