1・破瓜の封印

36/36

29人が本棚に入れています
本棚に追加
/175ページ
「何故、出会ってしまったのだろう」 そうすれば、こんな感情を知らずにすんだ。 「何故、触れてしまったのだろう」 そうすれば、あんな痛みを知らずにすんだ。 自分とはまるで違う世界の人間だと知りつつも、汚してはいけないものだと感じつつも、唯一欲しているものだと気付いてしまった。 「きみは、許してくれるか? 俺を、受け入れてくれるか?」 問いに答える声は、ない。 眠り続ける少女を見つめたまま、ブラウスのボタンに手をかける。 ひとつ、またひとつとボタンを外し、あらわになった胸元に吸い寄せられて、顔を近付ける。 あたたかくて、 やわらかな、 におい…… 光の中で、二人の肌が重なる。 静かに時間を紡ぐ二人に、風がカーテンを揺らして祝福の歌をうたう。 夢見心地の中で、願う。 この時間が、 永遠に続きますように── 果たして。 これは運命だったのか。 少女に寄せた想いも、月に詠んだ言の葉も、肌を重ね合わせたことも。 彼には、何の意図もないただの偶然でしかなかった。 彼はそれが、<破瓜の封印>の儀式だとは、知らなかったのだ──
/175ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加