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「何故、出会ってしまったのだろう」
そうすれば、こんな感情を知らずにすんだ。
「何故、触れてしまったのだろう」
そうすれば、あんな痛みを知らずにすんだ。
自分とはまるで違う世界の人間だと知りつつも、汚してはいけないものだと感じつつも、唯一欲しているものだと気付いてしまった。
「きみは、許してくれるか? 俺を、受け入れてくれるか?」
問いに答える声は、ない。
眠り続ける少女を見つめたまま、ブラウスのボタンに手をかける。
ひとつ、またひとつとボタンを外し、あらわになった胸元に吸い寄せられて、顔を近付ける。
あたたかくて、
やわらかな、
におい……
光の中で、二人の肌が重なる。
静かに時間を紡ぐ二人に、風がカーテンを揺らして祝福の歌をうたう。
夢見心地の中で、願う。
この時間が、
永遠に続きますように──
果たして。
これは運命だったのか。
少女に寄せた想いも、月に詠んだ言の葉も、肌を重ね合わせたことも。
彼には、何の意図もないただの偶然でしかなかった。
彼はそれが、<破瓜の封印>の儀式だとは、知らなかったのだ──
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