2・紅涙の呪縛

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すべてが眠りに就く夜陰の大地に、サイレンが冷たく響き渡る。 林道を走り抜ける車が空気をかき乱し、枝葉で眠っていた風の精霊を起こして連れ去る。 雲に見え隠れする月の下で、事の顛末が伝えられていく。 「恐ろしい殺人犯がうろついているらしい」 「襲われた家は血の海で、そりゃあひどい有り様だってよ」 「しかもそれは、高校生ぐらいの子供の仕業なんだとよ」 耳にしたものたちは不安と恐怖におののき、或いは好奇心に胸を躍らせて暗闇に目を凝らした。 しかし眠り続けるものたちは、それらなど知りもせずに、己の世界の安穏に身を浸らせていた。 風の精霊たちは顔を見合わせ、小首をかしげて、慌ただしく動き出す人々に苦笑いを浮かべた。 しばらくの間、翻弄され、乱れる空気に体を任せて楽しむ。 だが、不意に遠くから近づいて来る冷たい殺気に驚いて、精霊たちは一斉に空へと飛び立った。 天空で止まり、下界を見下ろす。 闇に支配された大地に点々と灯る明かりが、空の星々に似て綺麗だった。 見上げ、星の巡りに祈りを捧げる。 同じ時間を生きるすべての魂が 天命のめぐりと 自然の摂理に抗うことなく いつ如何なるときも とめどない輪廻の中に ありますように……
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