2・紅涙の呪縛

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  〇   〇   〇 ──朝は、分け隔てなくその部屋にも訪れた。 暗く、深い深い場所から、ゆっくりと体が浮上している。 そんな感覚があった。 なんだろう。 肌寒さと、自分とは違う息遣いを感じて、目を覚ました。 明るい色を感じた脳裏に映ったのは、白い百合にも似た、穏やか少女の寝顔。 一瞬、ドキリと心臓が高鳴る。 「あぁ、そうか」 昨夜のことを思い出し、安堵の息を吐く。 「朝、か」 ほんのりと明るい部屋を見渡し、体を起こす。 軽い頭痛を感じて、わずかに顔を歪めた。 血で汚れたシャツを脱ぎ、素肌で寝たからかもしれない。 小さく息を吐き、隣で眠る少女を見つめる。 夢、だったのだろうか。 昨夜の出来事──自分のしたことが現実だったのかどうか、不安になる。 何をしたのだろう。 少女に。 自分に。 「何故、お前は生きている?」 声に出した途端、微弱な電気が全身に走り、心が痛んだ。 少女の、ボタンの外れた胸元は、静かに上下していた。 その、白い肌に薄紅色のアザを見つけ、にわかに体が熱くなる。 視線を外し、窓枠に寄りかかって空を見上げる。 白んだ空で、小鳥がさえずりながら飛んでいる。 いつもなら、迷うことなく殺していた。 だが今は、ただ見つめるだけだ。 いや──ふと気がつくと、微笑を浮かべていた。
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