ノック

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ノック

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ ある大学生が上京するためのアパートを探していた。 なるべく安い家賃のアパートがよかったため、不動産屋にまずそのことを伝えると、従業員はすぐに驚くほどの格安のアパートを紹介してきた。 しかしあまりに部屋の大きさや立地条件と比べて家賃が安いので、何か欠陥でもあるのだろうと思い、紹介されたアパートを見に行ったが特にこれといった欠陥は見当たらない。 あと考えられる事はいわゆる「曰くつき」というやつだろう、そう思いはしたがとにかく自分の希望にぴったりなアパートだったので入居することにした。 引越ししてきたその夜、眠ろうとベットに入ると「コンコン」と玄関をノックする音がした。 ドアホンが付いているのにおかしいと思いながらも玄関を開けると、誰もいない。 気のせいかと思い再びベットに入るとすぐにまた「コンコン」とたたく音。 もう一度玄関を開けるがやっぱり誰もいない。 またベットに戻ると、またしても「コンコン」という音。 しかも最初より大きな音になっている気がする。 何度も繰り返される行為にこれがあの値段の理由かと思い、無視をして眠ることにした。 するとそのノック音はどんどん大きくなってしまいにはドアを叩き壊すかのような激しい音になった。 次の日すぐに不動産屋を問い詰めると、前にあのアパートで火事があって、あの部屋に住んでいた女の人が焼け死んだという話を聞いた。 つまりあれは外からのノックではなく、中にいた彼女が必死に外に出ようとしていた音だったのだ。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
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