引き抜く

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‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ あれはまだ私が18・9の頃でした。 その日はなんだか夕方から頭が痛く早めに寝ました。 当時、私のベッドは姉二人が使っていた二段ベッドのお古で、私は下に寝ていました。(上は洗濯物置き場と化していました・・・) で、ベッドの左側から2メートル程離れたところに大きな窓がありました。 これの外は車庫で蛍光灯が煌煌とついて いました。 ですから窓とベッドの間に人がいればくっきりとシルエットが見えます。 夜中、私のベッドの左側に誰かが腰をかけた気配で目が覚めました。 家族のものと思われるシルエットを寝ぼけマナコでボーっと見てから、「ああ、心配で様子を見に来たんだな~」と思いました。 でもそのシルエットが姉なのか、母なのか分からなかったので「誰?」と聞きました。 「ママよ」と紛れもなく母の声でそう答えました。 そして顔を近づけ、両手で私の頬を包むようにして触れてきたのです。 その手が氷のように冷たくて「うっわ~ママの手つっめた~!」なんてのん気に思っていたのですが、肌が痛くなるほどの異常な冷たさで・・・ さすがにおかしいと思い始め、目もちゃんと覚めました。 よく見てみると丸坊主のシルエットなんです。 耳の形もしっかり見えます。 母はショートですが人並みに髪があり、パーマをかけています・・・ こんなシルエットになるはずありません、それにいくら夜中と言えどこんなに目も鼻も分からぬほどシルエットが真っ黒になるものでしょうか? 「ママじゃない!!!」 そう思った途端、私は髪の毛をものすごい力で引っ張られたのです・・・ 身体の下にあったはずの長い髪を・・・ 天井に向かって引っ張られ、なんとも言えないザワザワ感を全身で味わいながら私は2段ベッドの端に右手で必死につかまって抵抗したのを覚えています。 でも「あ、このまま身を任せたら幽体離脱? ワクワク♪」なーんてアホな考えが頭をかすめました。 でも「今腕の力を緩めたらもう戻れない」そんな思いがなぜか湧きあがり、必死で(そりゃもう必死で!)モトの姿勢に戻り・・・ 気がついたら朝でした・・・。  全然寝た気がしなかった・・・ 安眠妨害反対! 単なる悪夢だと言われればそれまでですが、母に成りすましたシルエットとあの手の冷たさが、私は忘れられませんね。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
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