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これは……。
陸斗の目の前には見た事のない映像……風景が広がっていた。
目をつぶっていたはず……だよな……。
陸斗は民家など全く見えない深い森の生い茂っている木立の中に立っていた。いや、立っていたのではない。足には全く感覚が無かった。
陸斗は自分の足元を見た。木々の根本には、倒木や笹やシダ等が生い茂っていた。
けれど、陸斗の足先はそれらのものに埋もれず、拳一つ分上にあった。
宙に……浮いている?!
これは…夢?
不思議に感じながら、木々の間をフワフワと前に進んだ。
上空を仰ぐと、あまりにも済んだ藍色の空が広がっている。耳元を木下風が渡っていく。すぐ近くから、小鳥の声が聞こえて来た。心地好かった。
……俺は何でこんなところにいるんだろう。
ゆっくりと周囲を見ながら前に進んでいくと、急に辺りが暗くなった。
夜?……違う、雨雲だ!
陸斗はまた、宙を仰いだ。空には黒雲が立ち込め、暗闇に閃光が何本も走った。
雷!!
陸斗の意思とは関係無く、何かに持ち上げられるようにフワッと身体が上空に浮いた。
一瞬のうちに目の前が緋色に染まった。炎に包まれたのだ。
うぅぅ…息が出来ない……。
自分の全身に立ち昇る火柱に、恐怖感が襲ってきた。
怖い!
陸斗は恐怖感から逃れようと、自分で自分の腕を抱きしめた。
繁吹く程の激しい雨が降ってきた。取り巻いていた炎は弱くなり、そして消えた。
それほど激しい雨の中に居るのに陸斗の身体は全く濡れていなかった。
雨が降りしきる中、辺りは助けを求める叫び声、泣き声でいっぱいだった。右から左から前から後ろから……陸斗は悲鳴の上がっている渦中に居た。その声が頭の中で響き続けた。
何故か声の主等の姿は、全く見えなかった。
苦しい…もうやめてくれ……。
姿の見えない悲鳴に、恐怖感が溢れ爆発した。陸斗は耐え切れずに頭を抱え叫んだ。
「うああぁぁぁぁ……!」
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