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― 3 ―
「陸斗!おい、陸斗!」
聞き慣れた秋吉の焦った声が耳元に聞こえた。呼ばれるように陸斗は目を開けた。
目を開けた場所は、ソファーとテーブルの隙間だった。頭を抱えて倒れている自分の身体を、秋吉が揺すっていた。
陸斗は身体を起こし頭をゆっくり左右に振ると、周囲を見渡した。
さっきまで居たテレビ局内の自分の楽屋だった。
夢……だったのか?あれが?!
悲惨な情景が頭の中を駆け巡る。心臓の鼓動が速く鳴り、息が上がっていた。
陸斗はソファーに座り左手で顔を覆った。
掌に何かを感じ自分の手を見た。その掌はジットリと濡れていた。
陸斗の顔は汗でびっしょりだった。
「陸斗、大丈夫か?!」
「秋吉さん……」
「いったいどうしたんだ、この汗……」
言っている秋吉の青ざめた顔にも滝のような汗をかいていた。
「秋吉さんの方が酷いよ……」
「当たり前だ、帰って来たらこんなところに倒れてるんだからな」
言って、秋吉は自分の思い切り膨らんだビジネスバックからタオルを取り出し、陸斗の手を取り渡した。
「秋吉さんこそ、顔拭いた方がいいよ……」
「俺の事はほっとけ。どうしたんだ、気持ち悪いのか…何処か痛いのか?!」
秋吉は何枚タオルを入れているらしく、自分の分もバックから出して顔を拭いた。
タオルを握った陸斗の手は、小刻みに震えていた。両足はガクガクと力が入らなかった。
「大丈夫……秋吉さん遅いから、ソファーに寝ちゃって……落ちちゃっただけだから……」
本当の事を言えるはずもなかった。
言っても信じてもらえない。
陸斗はタオルで顔を拭いた。
あれは……何だったんだ……。
脳裏から離れない光景に、あまりにリアルで怖かった。汗が噴き出して鼓動が強く鳴る。苦しさに胸を押さえ、タオルで顔を抑えた。
胸を押さえた右手から《お守り》がぽとりと落ちた。
お守り……。
陸斗は落ちた《お守り》を拾ってぐっと強く握りしめた。握る手が震えていた。
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