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……陸斗…変だな。
秋吉は背中を丸めて座っている陸斗の隣に座った。
「本当に具合悪いなら、早目に病院に行に行こう。陸斗はいつもギリギリまで我慢するからな……」
言いながらそっと肩に手を置いた。
陸斗の胸は、大きな音を立てて鳴っていた。
秋吉さんを心配させては駄目だ。
「ホントに……大丈夫だから。眠かっただけ。変な…怖い夢見ていたんだ。だからちょっと動揺してるけど……大丈夫だよ」
「本当そうか?」
「うん」
陸斗は無理矢理作り笑いをした。笑って小さい深呼吸を一つした。
秋吉は陸斗が無理に笑っている事が分かっていた。
我慢強い陸斗が以前に風邪をこじらせ倒れたこともあった。その時の陸斗の様子に自分が気が付かなかった事に、後々まで後悔した。
けれども、陸斗にとって踏ん張り時な事も感じていた。
何か…隠してる……まあいい。そのうちに言ってくれるだろう。陸斗ももう子供じゃあない……。
「そうか、分かったよ」
言いながら、秋吉は陸斗がテーブルの上に散らかしていたファンレターを手早く紙袋に仕舞った。
「大丈夫なら行こうか。タクシーの中で少し眠ったらいい」
「そうするよ」
陸斗の返事に軽く頷き、秋吉は大きな荷物とファンレターの入った紙袋を持ち、楽屋のドアを開けた。
「行くぞ」
「うん」
立ち上がった陸斗の手の震えはいつの間にか止まっていた。
右手に持っていた《お守り》を上着のポケットに押し込め、鏡台の鏡を覗く。
鏡の中には青ざめた自分の顔があった。
……酷い顔だな。
溜息をついた。持っていたタオルを握りしめ、秋吉の後を追って楽屋を出た。
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