序章

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― 1 ― ここはどこ? パパ……ママ?………どこ? 泥土が口の中に入り込み、喉が痛くて声が出なかった。 おにいちゃん、おにいちゃん……。 心の中で呼んだ。 誰の声も聞こえてこなかった。 それよりも頭や身体全体にも泥がこびりつき、全身が痛くて身体を起こすどころか、指一本動かす事が出来ない。 ママ…ママ……どこなの?いたい……いたいよ……。 たすけて……ママ……。 重く開けられない瞼の隙間から、涙が零れた。 痛くて動けない背中から首筋に何かが流れるのを感じた。 雨だった。 ママ……さむいよ……いたいよぉ……。 ぼく、しんじゃうよ……。 たすけてよ……ママ……。 叩きつける雨音がどんどん遠くなり、そのまま何も聞こえなくなっていった。
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