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見ると、点滴が刺されている少年の小さな手が、看護士のスカートを掴んでいた。
「どうしたの?痛いの?今、お医者さんを呼んで……何?」
酸素マスクの中の小さな唇が動いていた。
看護士はベットの脇にしやがんで酸素マスクをずらし、優しく笑いながら少年に問い掛けた。
「どうしたのかな?」
「……マ…は?」
「え?」
「……ママは?」
看護士の表情が固まった。
言葉が出なかった。
応えない看護士に、掠れた小さな声で男の子は問い詰めた。
「……ママは何処?」
「…あ…あぁ……お母さんも怪我をして、別のお部屋に居るわよ。お父さんも……」
看護士の声は震えていた。
「だからね、今、お医者さん呼んでくるから、大人しく寝ててね」
「……うん」
安心したのか、言い終わらないうちに男の子はまた、眠りに落ちていった。
眠ったのを確認した看護士の頬を、涙が伝って落ちた。
こんなに小さいのに、一人ぼっちになってしまったなんて……何も悪くないのに神様は酷いわ……。
看護士はもう一度布団をかけ直すと涙を拭き、少年を起こさないように静かにドアを開け病室を出た。
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