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愛のある場所
牛乳たっぷりの大盛りシチュ-を幸せそうに頬張る彼を正面に、彼女も焼きたてのパンをちぎって口に運ぶ。
先ほどまで真剣に訓練に取り組んでいた兵士たちも、今では談笑したり、腹を満たすことに一生懸命で、今日も食堂は盛況だ。
その片隅で向かい合って食事をするは、ひと組の男女。男は飛び抜けて長身であることを除けばありきたりな青年兵士であり、女は群を抜いて冴えた美貌と知能の科学者だが、同時に愛想のなさも天下一品である。
今では誰も気にしないが、彼らが交際していることが発覚したときは、かなりの衝撃が走ったものだ。
それはさておき、二人はいつも食堂で昼食を共にする。出会ったのがその場所だからか、窓際の席に座り、もくもくと食事をする。
会話もするが、女が無口なために男が一方的に話しかけているようにも見えた。
それは本日も同じ事で、しかし少しだけ違っていた。
「俺達、なんで付き合ってるんだろうね」
言葉の意味を計りかねて女が顔をあげた。
「お互い忙しくて、それでもご飯だけは一緒に食べてるけど」
「……なに?」
「飽きないかな、てこと」
女は食事の手を止めた。
それは。 つまり。
「…………別れ」
「結婚しない?」
男は、まるで午後の予定を聞くかのように気軽に言った。
女は、一瞬の沈黙の後に小さく笑って頷いた。
「本当?」
「うん」
「そっか、よかった。じゃあ今度休み合わせて指輪買いに行こうよ」
「うん」
そして再び食事に戻る。
先ほどまで真剣に訓練に取り組んでいた兵士たちも、今では談笑したり、腹を満たすことに一生懸命で、今日も食堂は盛況だ。
その片隅で向かい合って食事をするは、ひと組の男女。男は飛び抜けて長身であることを除けばありきたりな青年兵士であり、女は群を抜いて冴えた美貌と知能の科学者だが、同時に愛想のなさも天下一品である。
今では誰も気にしないが、彼らが交際していることが発覚したときは、かなりの衝撃が走ったものだ。
そんな二人の愛は、いつでもこの場所にある。
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