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葵が驚いて振り向くと、同じように驚いている神條 夜海の姿があった。
「…お前、何をしている?」
僕が放心していると、唐突に声をかけられた。
夜海兄ちゃんを見ると訝しげに目を細めている。
「え?あっあの…」
何て言ったらいいのかわからなくてつい黙ってしまった。
「用がないなら帰れ。邪魔だ」
そう吐き捨てると葵の横を通り過ぎようとした。
「…!よ…夜海兄ちゃん!」
通り過ぎる間際、やっとの思いでそう呼んだ。
夜海兄ちゃんは足を止めてこちらを振り返った。
「…俺はお前のことなんか知らない。気安く呼ぶな」
冷たい声と瞳に空気まで凍ったのかと思った。
暗い沈黙
そう例えよう
冷気のような声音に光のない視線
僕は、恐かった…
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