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漆黒の闇。
潜む者は影。
唯一それを照らすのは…月…。
少女はその光を心地よさそうに浴びていた。
吸い込まれそうなほど、黒い瞳。
月の光に照らされて輝き、なびく、髪。
それらとは正反対に、肌は……白。
彼女がここにいるのは、彼女の意思ではない。
夢遊病のように、何かに誘われて来たのだ。
ハッとして周りを見回す彼女は、どうやら意識を取り戻したようだ。
「ここ…どこ……?なんで私………。」
クスクスと笑い声が聞こえる。
声の主は、木の影からすっと現れた。
「誰!?」
暗くて顔があまり見えない。
「誰、か……。まぁ、人間くらいだな。俺にそんなこと聞くなんて。」
クックックと、おかしそうに笑うのは、自分よりほんの少しだけ年下の少年に見える。
だが、彼のオーラと言うべきか。
彼の雰囲気は、自分より遥かに大人のオーラを纏っている。
「だ…誰?」
「俺?さぁ、誰だろうね。」
ククッと笑う彼に、恐怖を感じる。
何だか、危ない気がする。
逃げなきゃいけないはずなのに、足が動かない。
ゆっくりと彼は笑いながら近づいてくる。
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