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「やっ…いや……近寄らないで!」
どうにか声だけは出せる。
拒絶の言葉を口にするが、それすらも彼は楽しそうに口を吊り上げる。
「じゃあ、逃げればいいだけだろう?」
まるで私が逃げれられないのをわかってるかのように、微笑んでそう言う。
月の光でだんだんと彼の顔立ちが見えてくる。
髪は漆黒の様に暗く、顔は少女ほどではないが白。
何より彼女を驚かせたのは、目の色だった。
「あ…か……?」
カラーコンタクトではないのかなんて疑問は微塵も浮かばなかった。
何故かすんなり納得してしまった。
彼の目は紅だと。
とても彼のオーラに相応しい色のような気がした。
「クックック…そんなに俺の顔は美しいか?」
やばい。
頭の中で警報がなる。
彼を見てはいけない。
彼の目を見てはいけない。
だけど…
―――目が離せない。
だめ!
だめ!!
見ては……だめっ!!
力を込め、目を閉じた。
たったそれだけのことに、体中の力を込めなければならなかった。
「ほう…賢明な判断をしたな。」
クスクスと笑い声が聞こえる。
目を閉じたからといって、安心できるわけがない。
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