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ふっ、と顔に何かがあたる。
多分、彼の手。
「震えちゃって…怖いくせに頑張ってるんだな?ほら、目を開けろ。楽にしてやるから。」
イヤイヤ、と首を振る。
先ほどより体が僅かに動くようになっているらしい。
「ククッ…そうか。俺の名は夜白(ヤシロ)。まぁ、二つ目の名だが…覚えておくといい。」
クスクスと笑う声を聞きながら、何かに呑み込まれていくような感覚がした。
ハッと目を開く。
そこはいつも見慣れた光景。
窓から光が差している。
朝か。
少女はベッドから起き上がった。
今のは夢だったのかと不思議に思う。
夢にしてはリアルすぎる。
あの時の恐怖も、彼の漆黒の髪、紅い目も、彼の手の感触も、夜白と名乗った低い声すらもはっきりと覚えているのだ。
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