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いつも歩いてる桜並木は枝だけになって寒そうに揺れている。
隣ではユウがまだ寒い寒いと騒いでいる。
いい加減相手をするのも疲れていたので、無視をしているとため息をついて喋るのを止めてしまった。
しばらく無言で歩く。
その内二人の分かれ道に着いてしまった。
「じゃあね」と挨拶しようとして顔を上げるとユウが当たり前のように私の家のほうに歩いてこようとしていた。
「ユウ、今日は寒いんだしもう帰りなよ。今日は送らなくていいよ」
「え?」
ユウは一瞬驚いたように目を見開いた。
「いや、いいよ。送ってくって。喋ってたら寒いのもまぎれるっしょ」
少し食い下がってくる。
いつもなら「そうか」で「ばいばい」なのに。
「そうやってこの前風邪引いたでしょうが。だいたい、わざわざ待ってなくてもいいよ? ウチまでだって遠くないんだし」
ユウと私は大学が違う。
なのに一緒に帰れるのは毎日ユウが大学の前で私を待っているからだ。
この十一月の寒空で、だ。
いい加減にしてもらわないと困る。
「……そうか」
ユウは少し俯きながらポソリと言った。
「……ユウ?」
いつもならニコニコとバカみたいに笑っているユウの顔に影がさした気がしたのでつい心配になってしまう。
顔を覗き込んで確認するとユウは私の心配そうな顔に気づいたのかにっこりと笑った。
「ユウ、大丈夫? どっか具合悪いの?」
こんなのでも一応彼氏だ。元気がなさそうなのが気になる。
「いや、別に? ミナが冷たいな~って絶望のふちに沈んでただけ」
ユウは取り繕うように笑って言った。
「そんなのいつものことじゃない。いまさら何言ってんの」
「いや、そこがまずおかしいだろ。俺たち恋人同士だぜ? カップルなんだぜ? 何でこんな冷戦関係が続くんだよ」
やっぱりどうあってもユウはユウだ。
こだわるところが子供というか、いちいちそんなことでへそを曲げないで欲しい。
だいたい、冷戦って……喧嘩してるわけでもないのに……。
「俺はこんなにミナが好きなのにさ~」
「!!」
思わず唸ってしまうところだった。
顔が熱くなっていくのが分かる。
ちらりとユウを見る。
暗いしこの距離なら見えないと確認できてホッとする。
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