本編

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 今日はいつもみたいに言ってこないから完全な不意打ち状態になってしまった。  ユウは毎日ちょっとした話や私のしぐさがツボに入ってしまったとき、今みたいにいきなりスキという単語を用いてくる。  いつもなら受け流せるのに今はユウのことを心配して顔を覗き込んでしまった後だ。ただでさえうかつにユウの顔を近くで覗き込んでしまったのだ。  少し自分の大胆な行動についてと、ユウのこだわりについてで頭がいっぱいになっていてまともな思考なんて出来るはずがない。  そこにさらにユウの追い討ちは続く。  「ミナは?」  ユウの目は私をしっかりと見ている。  「ミナは俺のこと好き?」  ユウの瞳に私の姿が映っているのが見える。  質問が質問なだけに私は困っていた。  「別に」  無難な回答をする。  ──嫌いじゃない。  そういう意味。  私は「好きだ」とか「愛してる」なんていうのはそうそう口にしてはいけないものだと思っている。  「好きだ」と言われるのは最初は嬉しいけどだんだんその言葉は軽くなっていってしまう。  私はそうなってしまうのをあまり良しとはしない。  大体好きでもないのにこんなのと付き合うわけがない。  心の中では「好きだー」と叫ぶ自分が居るが、それをいちいちユウに伝えても何にもならないので言う気はない。 ユウだってそれくらいのことは分かるはず。  私がユウのことを好きだってコトくらい分かってくれるはず。  だから敢えて言わない。  気づいたら家の前についていた。  ユウをちらりと見ると、ユウは悲しいような寂しいような目をして、それでいてニッコニッコと笑顔で何かを待ってるような顔で私を見ていた。  私は少しため息をつくと、  「それじゃね、ユウ」  そう言って家の扉を開けた。  「うん。ミナ、日曜日空けとけよ」  ユウが言う言葉に私は後ろ手で手を振ってドアを閉めた。
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