993人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ…あの…」
どうしてこんな寒そうにしてる人を後目に、通り過ぎて行けるのか…
やっぱり世の中は変わったな。
「寒い…ですよね?どうしました?」
顔を上げたその人は、すっごく綺麗で真っ黒な瞳が俺を捉えた。
「…………」
無言で俺を見上げるその瞳は涙で揺らいでいて、益々放っておくことが出来なくなった。
「寒いでしょ、帰る場所は?」
誰かを待ってるようには見えない。
「……………捨てられた」
その言葉に耳を疑った。捨てる?人間を?なんで捨てるのか。
「…………あの、寒いでしょ家においでよ」
細い腕を引っ張ると、力を振り絞るかのように振り解かれた。
「触らやんでっ…止めてや…どうせあんたも興味本位なんやろ、また要らなくなったら捨てるんやろ」
そんなことを言われるとは思ってなかった俺は驚愕した。
興味本位で人を拾って、要らなくなったら捨てると言う意味がわからなかった。
最初のコメントを投稿しよう!