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葵ちゃんがシャワールームから出てきて生乾きの髪をタオルで拭きながらソファーの前に立った。
「座っていいよ。ココア冷めちゃったね、煎れなおすから待ってて」
ソファーから立ち上がりココアの入ったマグカップを持つと葵ちゃんが俺の服の裾を引っ張った。
「それ…飲むから…」
「なんで?冷めちゃったし底に粉が溜まってるよ?」
「ぇえの。葵そっちが飲みたいねん」
冷めてるのに、そう思いながら、葵ちゃんにマグカップを渡すと両手で抱えてココアを口に運んだ。口ピがカチンとマグカップに当たる音が、俺にとっては新鮮だった。
「おいしい…//」
「そう、良かった」
葵ちゃんはマグカップを抱えたまま、窓の外を眺める。
「綺麗」
目に映るのは、ライトアップされた夜景と真っ白な雪。俺には見慣れた景色だけど、葵ちゃんにとっては初めて見る景色なんだよね。
「そうだね」
でも、夜景よりも夜景を眺めてる葵ちゃんの方が綺麗だったと思う。
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