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青「ハァ、ハァ……」
数分後、ようやく足がいうことをきいてきた。
立ち上がった青葉は呼吸を整え、冷静に考えた。
あいつは恐らく、三年の不良グループの奴だ。
あのグループは確かバンドを組んでる。
その練習をすんのに使ってるスタジオが奴らのたまり場だ。
あそこなら声を上げられてもわからない。
ここから近いし、詩織はきっとそこに連れて行かれたはずだ。
早く詩織を助けなきゃ。
あいつは一流魔女だ。
魔法を使えばあんな奴、軽くひねれるだろうが…
魔女の掟の一つ。
人前で魔法を使ってはいけない。
あいつ真面目だから、きっと掟を遵守するはずだ。
助けを呼んでる暇なんてない。
俺が助けに行かないと…
青「……くっ❗」
青葉の足が、途端に震えだした。
怖い。
体全体に冷たい汗が流れる。
俺が…俺が一流の魔女だったら…
青葉は自分を強く責めた。
彼は魔女だ。
しかし、何か魔法が使えるのか?
そう問われても、彼はノーと答えるしかない。
彼の母は魔女だ。
故に、彼には魔女の血が流れている。
しかし、彼はなぜか魔法を使うことができない。
彼は魔女の出来損ないなのだ。
青「ハァ…ハァ……」
詩織はきっと、俺に助ける力がないから何も言わずに行ったんだ。
俺は、詩織に守られたんだ。
守られてばっかでいいのか?
魔法が使えないのをいいわけにしていいのか?
青「……へっ、良かないよな」
青葉は唇に付いた血をぐいっと一拭きし、スタジオへと走っていった。
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