目覚め

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詩「青……君…」 詩織は言葉を失った。 あれは自分のことを青葉だと言った。 でも違う。あれは青君じゃない。 あんなの…青君じゃない… 青君を…返して… 詩「…う…ヒック……青君……」 詩織は泣いた。 胸に詰まった想いを溜めておけなかった。 …――… その時、声がした。 暖かい声が。 詩「……え?」 詩織は涙を拭き、前を見た。 あの漆黒に染まった長い髪も まがまがしいオーラも 鋭く輝く銀色の瞳も無くなっていた。 詩織の前に立っていたのは、 確かに青葉だった。 詩「青…君?青君だよね?」 青「…馬鹿だな、他に誰がいるんだよ」 青葉はニコッと笑って見せた。 ああ…そうだ。この感じ、間違えない。 私の前にいるのは、間違いなく青君だ。 詩織は安心し、また一つ涙を流した。 青「へっ、全く…」 泣き虫だな、詩織は。 全く… あ…あれ? なんか…うまく立てねぇ…ふらふらする… 詩「…青君?」 詩織が心配そうにこっち見てる… 何だよ…俺は大丈夫だから。 今そっち行くから… …… 『ドサッ』
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