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「黒髪はお好きですか?殿下。」
澄み渡るような美しい声が聞こえた。
先程とは別の金髪の王女に顔を近づけ甘い言葉を囁いていた王子が、その声が聞こえた方を見る。
「……和の国の第二姫か。」
目の上で切り揃えた前髪、腰まであろうかという真っ直ぐな黒い髪は光を浴び、光り輝いていた。肌は透き通るように白く、黒々とした大きな瞳がよく映える。煌びやかなドレスではなく、凛とした赤い着物を身にまとい、その美しい赤が彼女の黒髪をより一層美しく見せていた。
「ユズ・キサラギと申します。遅れて到着したことをどうかお許しくださいませ。」
先日行われた選考会に彼女の姿はなかった。
「手違いで第三姫のリエがこちらに送られてしまって……。」
「琴が弾けるとか言ってた女だな。」
「おそらく…。大変申し訳ございません。」
ユズ姫は手を床につけ、倭の国特有の謝罪の形をとった。
王子は顔を上げさせ、家臣を呼び到着したばかりの姫を部屋へと案内させた。
「……いい女だ。」
王子は部屋へと案内されていく姫を目で追いながら呟いた。
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