氷の女王

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彼女は…スタイルいいし美人だし、大人っぽい上に成績も運動もいい優等生だ。 まるで漫画に出てくるような完璧な人間。 完璧過ぎて逆に話掛けたくても掛けられないのが殆どで… 俺も正直声を掛けたくても掛けられない奴の一人。 けれど中には何も考えずにへらへらと好奇心に彼女に近付いてくる奴もいる。 「ねぇ保坂さんって彼氏いんの?いなかったら俺、立候補していい?」 今更だが、彼女の名前は保坂 翼(ほさか つばさ)女性の名前で“翼”は珍しい。 彼女……保坂さんはクラスの中で一番ウザイ男、平野に絡まれていた。 俺は本当はこの場をどうにかしたかった。 平野はしつこい男で有名だ。あまりのしつこさに何人もの女子が怒ったり泣いたりしたところを見掛けた事がある。 けれど俺はそんな奴に絡まれてしまった保坂さんを止める事は出来なかった。他の奴らも皆、止めに入らない。 きっと皆、俺と思っている事が一緒だ。 …気になるんだ。 彼女に彼氏がいるのか…… 「ねぇ、無視しないでよ。彼氏いんの?いないの?ねぇ」 「……いない」 「本当っ」 保坂さんの言葉に俺や平野を含め他、彼女に想いを寄せている奴らはホッと胸を撫で下ろす。 けれどその安心は次の言葉で俺達を不安にさせたんだ。 「……私、“男には興味ない”の」 「へ……」 辺りの空気が絶対零度に凍りつく。 保坂さんのその発言で“保坂 翼はレズなんじゃないか”とねもはもない噂が学校中に広まったのは直ぐの事。
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