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それは、ユーフォ・チューバパートである。
どうしてもクラシックでもポップスでもひのめをみることのない楽器だからか、それともその見た目からなのか分からないが、とにかく人気がなかった。
「あ゛ぁ~もう~暇!暇すぎるぅ!」
と、楽器を抱えながら足をばたつかせているのが、パートリーダーである三年の井上京子。
女の子にしては高めな身長、そんなに細いわけでもないが無駄な肉がない体格、薄い紫がかった色のフレームのメガネ。量の多い髪を2つに分けて左右の耳の下で結んでいる。
「うるせー!少し落ち着け!」
京子の隣で練習していたユーフォニウムの吉田実が叫び返した。
この教室には京子と実と二年生がふたり。
「あぁ~どうすっかな~。…偵察いこ。」
京子は楽器を置いて立ち上がると、そのままドアに向かった。
「お…おい!ちょっと待てよ!」という実の言葉をスルーして京子は廊下へ出た。
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