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電話を切った後も胸がドキドキしている。
しばらくボーっとした後、現実に戻り、
明日何を着て行こう、
立ち上がりクローゼットを開けた時、
彼からの電話が鳴った。
毎晩必ず来る電話。
でも今日は上の空で彼の話が耳に入らない。
心ここにあらずの状態で会話をしていると、
「美絵なにかあった?」
いつもと違う私の様子に不安そうに彼が聞く。
「ううん、今日はちょっと仕事疲れちゃって…。」?
「なんだぁ、なら早く言えって~。
今日はもう早く寝るんだぞ。」
「うん、ありがと。
あ、あのね、明日久美とご飯行くから夜いないけど。」
「了~解。
心配だから帰ったら一応電話入れるんだぞ。」
「うん、じゃ、おやすみ。」
「愛してるよ、美絵。
おやすみ。」
「ありがと。じゃ…。」
彼は電話を切るとき必ず、「愛してるよ」と言う。
私は「愛してる」とか「好き」とか言葉に出すのが恥ずかしくて、
いつも「ありがと」と返してごまかす。
とにかく優しい彼。
これ以上、私を愛してくれる人はこの先いないだろうと、
まだ若干二十歳ながら確信していた。
明日が楽しみな気持ちと、
彼への罪悪感が交差する中、
その日は、いつの間にか眠りについた。
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