かけがえの無い一時をアナタに

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今、セレフォルンに夜は来ない。 三日三晩やら七日七晩なんて表現をたまに聞くが、人間そんなにも身はもたない。 だが悠斗は理解した。それが比喩表現などでは無いことを。 もちろん体はもたない。それでも騒がずにはいられないのだ。喜びを全身で表さずにはいられない、その感情を爆発させずにはいられないのだ。 騒ぎ疲れれば気絶するように眠り、目が覚めれば再び気絶するまで騒ぎ倒す。 もちろん馬鹿な行いだが、医者を含め誰も止めようとはしない。 そんな宴も4日目。いい加減に国の財政も国民の家計も火の車になるため、ここいらで気を引き締め直さなければならない。 その為の儀礼。今後ガルディアスが、セレフォルンがどうなるかを宣告する。 その話し合いに、アルスティナとリーゼロッテを中心とした国の要人達が集まり、民達の奇声を聞きながら至極真面目に議論を重ねてきた。 『愛する我が民達よ』 演説用の、軽く崩壊したバルコニーにアルスティナが立ち、その少し後ろにリーゼロッテが控える。 そしてアルスティナが告げた。 『ガルディアスは王女リーゼロッテ・ガルディアス・ルッケンベルンが王位を引き継ぎ、セレフォルンの永久同盟を結びます!』 その発表に民が沈黙する。そうだろう。セレフォルンは幾多の犠牲を払い、ガルディアスに勝利した。 当然、敗者であるガルディアスのことごとくはセレフォルンの支配下となり、ガルディアスという国も滅びて然るべきなのだ。 ふざけるな、と野次が飛ぶ。が、意外にも全体の一割に満たない人数だった。 大半が何か考えがあるのだろうと女王の次の言葉を待つ。 『我々は戦い、傷つき、そして勝利しました。しかし慢心してはなりません。私達はいったい何の為に戦ったのか』 一部の人間はそこでハッ、と気づいたようだが、多くの人間が首を傾げる。 『祖国を護るために。我々はそう願いながら武器を、杖を取ったはずです』 その言葉にようやく全員がきづいた。セレフォルンはガルディアスを支配するために戦争をしていたのではない。 ただ、守りたかったから戦ったのだ。
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