天秤

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「では教えてもらいましょうか…?」 長谷川の姿は見えなかったが、涼の父親は扉を閉める時に見た、口角を上げている顔を思い出させた。 涼の父親は唇を噛み拳を握りながら「済まない…」と、独り言を呟き軽く息を吐く。 「俺は何も話さない…閉じ込めている時点で気付くべきだった…どうせ話しても俺も家族も殺すだろ?」 涼の父親の答えに何かを考えているのか、長谷川からの返事は直ぐには無かった。 数秒後、長谷川は含み笑いをしながら「良く分かりましたね…あわよくばと思いましたが、中々と賢い人だ…望み通り家族もろとも殺してさしあげます」と言い放った。 これしか無かったんだ…済まない、恵…涼… 涼の父親が妻と子に心の中で謝罪すると、それと同時に頭上から大量の水が放水され始めた。
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