1.慎之介

2/8
前へ
/70ページ
次へ
. 「樹(たつき)~~‼」 遠くから名前を呼ばれ、俺は走っていた足をとめた。 すると、少し遠くにいたクラスメートが数人追いかけてくる。 そして名前を呼ばれた相手に向かって声をかける俺。 「なんだよ耕介(こうすけ)」 耕介と呼ばれた少年は、短髪にキャップをかぶっている。 いかにも小学生って感じだ。 「なぁお前今日広場来るか??サッカーしようぜ‼」 耕介は幼稚園から今までずっとクラスが一緒で、いつも一緒に遊んでいる。 サッカー・ドッヂボール・野球、何でもやれるから面白い。 そしてイタズラして一緒に怒られるのもコイツ。 いわゆる親友だ。 しかし… 「あー…わりぃ。今日行くとこあんだよオレ」 と、断る。 その瞬間、 「「「ハァっ⁉⁉⁉」」」」 耕介と一緒にいた奴らも一斉に声をあげた。 「ちょっ…おまっ…樹が遊びの誘いを断るなんてっ…」 「うわあぁぁぁ‼明日は嵐がくる~~ッ‼‼」 「地球が壊滅するーー‼‼」 「ノストラムスの大予言当たりっ⁉⁉」 ………なんて、各々でほざきやがるから。 ゴンゴンゴンゴンッ‼‼‼〓 「っるさい‼」 と軽く殴っておく。 全く…しかも最後の奴…、それを言うならノストラダムスだろ…アホめ。 すると、 「でも樹君、最近広場こないよね??何か通い始めた??」 オレのコブシを逃れた唯一の男子が声をかけてきた。 名前は優己(ゆうき)。 おばあちゃんが外人らしく、色素の薄い髪に茶色の眼をしている。 優己は頭がいい。 耕介みたいなのとは正反対なタイプで、オレが殴る対象から外れている、珍しい男友達。 「あぁ…ちょっと「ばぁ~~か‼コイツが何に通うってんだよ‼」 オレが言うのを遮って、耕介がしゃべる。 「え??う~ん…塾とかお茶とか…??」 優己がおっとりと言う。 その瞬間、 「ぶっ‼あっははははッ‼‼樹が塾⁉ありえね~~~‼‼‼」 耕介達、殴られた組が爆笑する。 ゴンゴンゴンゴンッ‼‼‼〓 「うるっっせぇ‼‼テメェらにだけは言われたくないっつーの‼‼」 何となくムカついたから殴ってみる。 まぁ確かに、このオレが塾、ましてやお茶なんて有り得ない。 …優己んちは親がすげぇからな。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加