1.慎之介

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. 別れた耕介達が自由に思想を巡らせている頃…。 「やっべ~ちょっと遅くなっちまった…」 樹の家から走って数分、 住宅地には珍しい、広い雑木林がある。 一軒家である樹の家自体、マンションなどの住宅街からは少し離れている。 地方の田舎に帰ったような、そんな家並みの中で樹は暮らしていた。 その中でもここは、古い神社を囲む林の様な、独特な雰囲気をもつ雑木林だ。 細い木から太い木、それぞれが自然のままに生えている…そんな感じの場所。 子供にとって、これ以上に魅力的な遊び場はないだろう。 (着いた…) 息をきらせながら、雑木林に入っていく。 思えば初めて入った時は、ちょっとした秘密基地探しみたいなものだった。 雑木林を探検していくうちに、 いい所をみつけた… 後で耕介達に教えてやろうとも思った。 でも今現在、それは出来ずにいる。 むしろ、さっきのように隠す形になってしまっている。 …その全ての原因が、『こいつ』だ。 「っ慎之介(しんのすけ)‼」 雑木林の中でも、一際奥に入る。 するとそこには、太くて立派な一本の桜の木。 その木は夏の青空に広々と枝を広げて、自分の存在を誇示している。 しかし、とても古いのか、木の幹がはがれ始めている。 「あっれぇ…??慎之介??いねぇの~??」 桜の木の周りをぐるぐる回ってみる。 何の反応もない。 「っ慎之介ー??しーんーのーすーけー‼」 …おかしい。 いつもならひょこっと出てくるくせに。 少し不安になった。 (まさか…あいつ…っ⁉) 「っしんの『呼んだか??』 ひょっと天井から顔が覗き込む。 「ギャーーーーーーッ‼‼‼」 『うおぉぉぉっ⁉⁉』 両者ともにはじき飛んだ。 樹は尻餅をついている。 「こっこっ…」 『…こっこ??』 ピシ……(←何かがはじけた音) 「こンッのクソお化けーーーッ‼なんっでもっとフツーに出てこねぇんだーーーッ‼‼‼」 声の主を指差し、大声で叫ぶ。 すると、 『そんなお主っ、無茶を言うなっ‼こちとら何年物の怪をやっていると思っている‼平行感覚などとうに無くしたわッ‼‼』 と反論する。 いや…………えばるなょ(汗) 半ば呆れつつ、口答えする声に向き合った。 桜の木に手をつき、そっと立ち上がる。 すると、目の前には一人の男の姿。
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