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別れた耕介達が自由に思想を巡らせている頃…。
「やっべ~ちょっと遅くなっちまった…」
樹の家から走って数分、
住宅地には珍しい、広い雑木林がある。
一軒家である樹の家自体、マンションなどの住宅街からは少し離れている。
地方の田舎に帰ったような、そんな家並みの中で樹は暮らしていた。
その中でもここは、古い神社を囲む林の様な、独特な雰囲気をもつ雑木林だ。
細い木から太い木、それぞれが自然のままに生えている…そんな感じの場所。
子供にとって、これ以上に魅力的な遊び場はないだろう。
(着いた…)
息をきらせながら、雑木林に入っていく。
思えば初めて入った時は、ちょっとした秘密基地探しみたいなものだった。
雑木林を探検していくうちに、
いい所をみつけた…
後で耕介達に教えてやろうとも思った。
でも今現在、それは出来ずにいる。
むしろ、さっきのように隠す形になってしまっている。
…その全ての原因が、『こいつ』だ。
「っ慎之介(しんのすけ)‼」
雑木林の中でも、一際奥に入る。
するとそこには、太くて立派な一本の桜の木。
その木は夏の青空に広々と枝を広げて、自分の存在を誇示している。
しかし、とても古いのか、木の幹がはがれ始めている。
「あっれぇ…??慎之介??いねぇの~??」
桜の木の周りをぐるぐる回ってみる。
何の反応もない。
「っ慎之介ー??しーんーのーすーけー‼」
…おかしい。
いつもならひょこっと出てくるくせに。
少し不安になった。
(まさか…あいつ…っ⁉)
「っしんの『呼んだか??』
ひょっと天井から顔が覗き込む。
「ギャーーーーーーッ‼‼‼」
『うおぉぉぉっ⁉⁉』
両者ともにはじき飛んだ。
樹は尻餅をついている。
「こっこっ…」
『…こっこ??』
ピシ……(←何かがはじけた音)
「こンッのクソお化けーーーッ‼なんっでもっとフツーに出てこねぇんだーーーッ‼‼‼」
声の主を指差し、大声で叫ぶ。
すると、
『そんなお主っ、無茶を言うなっ‼こちとら何年物の怪をやっていると思っている‼平行感覚などとうに無くしたわッ‼‼』
と反論する。
いや…………えばるなょ(汗)
半ば呆れつつ、口答えする声に向き合った。
桜の木に手をつき、そっと立ち上がる。
すると、目の前には一人の男の姿。
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