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単にこれだけ聞けば、その辺の時代劇にあるような、ベタなシナリオだと感じる。
だけど…実際に本人の口から聞くと、全然ちがくって。
何て言うか…慎之介の強い想いが伝わってくるって言うのかな。
……慎之介は本っ当にお姫様が好きだったんだ。
小さい頃からずっとずっと…。
慎之介が姫と初めて会った時のこと、
初めて話した時のこと、
初めて笑った顔を見た時のこと、
色んな話を聞かせてもらった。
元服して、正式にお城に仕えられるようになったときは、本当に嬉しかったんだと、
笑ってオレに話してくれた。
それからは、より近くで姫を想う事ができるようになって……。
…でも、その反面
いつかはこうなるのではないかと思っていたとも。
『うん。だから実は私は上様を恨んだりしてはおらんのだ。
…本当だぞ??ただ……代々一族の保ってきた信頼を失ってしまったこと、
…そして何よりも、姫の行く末が気にとまってな…』
くしゃっと笑いながら言う慎之介。
この時の慎之介の顔が、何故か…オレは忘れられなかった。
《…慎之介っ…》
あぁ…………姫の叫ぶ声が聞こえる。
…姫……姫……
あなたには嫌な想いをさせてしまった…
…これからあなたは、
どのように生きていかれるのか……
見ているだけでいい…
言葉を交わせなくてもいい…
ただあなたのお側で…
あなたを見守ることができないだろうか………
主人に切り捨てられた慎之介は、最期の最後まで姫を想い続けた。
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