1.慎之介

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. 単にこれだけ聞けば、その辺の時代劇にあるような、ベタなシナリオだと感じる。 だけど…実際に本人の口から聞くと、全然ちがくって。 何て言うか…慎之介の強い想いが伝わってくるって言うのかな。 ……慎之介は本っ当にお姫様が好きだったんだ。 小さい頃からずっとずっと…。 慎之介が姫と初めて会った時のこと、 初めて話した時のこと、 初めて笑った顔を見た時のこと、 色んな話を聞かせてもらった。 元服して、正式にお城に仕えられるようになったときは、本当に嬉しかったんだと、 笑ってオレに話してくれた。 それからは、より近くで姫を想う事ができるようになって……。 …でも、その反面 いつかはこうなるのではないかと思っていたとも。 『うん。だから実は私は上様を恨んだりしてはおらんのだ。 …本当だぞ??ただ……代々一族の保ってきた信頼を失ってしまったこと、 …そして何よりも、姫の行く末が気にとまってな…』 くしゃっと笑いながら言う慎之介。 この時の慎之介の顔が、何故か…オレは忘れられなかった。 《…慎之介っ…》 あぁ…………姫の叫ぶ声が聞こえる。 …姫……姫…… あなたには嫌な想いをさせてしまった… …これからあなたは、 どのように生きていかれるのか…… 見ているだけでいい… 言葉を交わせなくてもいい… ただあなたのお側で… あなたを見守ることができないだろうか……… 主人に切り捨てられた慎之介は、最期の最後まで姫を想い続けた。
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