1.慎之介

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. その頃、暦では春。 主人の館の庭にも、沢山の桜が咲いていた。 …横たわった慎之介。 そのとき、一筋の強い風が吹く。 最期の力を振り絞り 何となく、うっすらと開いた目の前には 無数の桜の花びらが舞っていた。 無音の世界。 目に飛び込む勢いの花びら達。 真っ白に染められていく背景。 それはまるでこの世の全てを覆い隠すかのようで………。 ―――アァ… ナントミゴトナ サクラダ………… ワタシモ…サクラニ ナルコトガデキレバ… ヒメ…ノ…オソバニ… イラレル…ノニ……… …そうして 気がつけば、慎之介は桜の木の精になっていた。
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