第十九章

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でも馬鹿正直に全ては話せなかった。本家での出来事も、"あの人"の事も。 彼はあたしの執事だけど、叔父さんが雇ってくれた人で、姫野の執事じゃない。それが決定的に風間とは違かった。 美「心配してくれてありがとうございます。でも大丈夫ですよ。ちょっと暑さで頭痛がたまにあるだけです」 最近頻繁に起こるようになった頭痛。きっと暑さと疲れと、少しの不安からのものだろう。 そう明るく言ったつもりが綾斗さんは少し顔を青くして心なしか慌て始める。 綾「頭痛ですか、ではすぐに医者を…」 美「えっ!いえ、そんなたいした事ではないんです!本当に!」 綾「ダメです、何事もなかったとしても診てもらうだけでも…」 いつもの綾斗さんと打って変わって深刻そうな顔つきに反論できなくなる。 美「わ、分かりました。でも呼ぶんじゃなくて自分で行くので大丈夫です!」 綾「ではお供させていただきます。ティータイムが終わりましたら、さっそく行きましょう」 これは言い逃れられない。苦笑いして了承するとほっと息をつく綾斗さん。その姿を見るのもほとんど初めてで内心首をかしげる。 そこまで親身になられるとは…。 じっくりお茶を堪能したあと、いつの間にか呼んだのか正門前に止まっていた高そうな黒塗りの車に乗り込んだ。 門限まで時間もあるし佐渡凛に連絡しなくて大丈夫かな。とあれやこれや考えているうちに病院に着き、診察を受ける。 美「頭痛薬、貰ってきました」 心労、疲労、気温の変化、など様々な条件が重なったための頭痛。 安心させるために笑ったら何だか複雑な表情を一瞬見せて、すぐに目を伏せた。 綾「では、今日は早いうちにお休みください。よく眠れる紅茶を用意致します」 美「はい、分かりました」 綾斗さんが寮の部屋まで御飯を持ってきてくれたり、お茶を入れに来てくれたりする事もたまにある。 それは毎日ではなく、少し疲れた日や、よく眠れない時、などと何故かとても良いタイミングなのだ。流石すぎて何も言えない。 因みに佐渡凛も一緒に頂いている。普通にお礼を言って静かに食べているあたり、綾斗さんの腕をかなり評価してるんだと思う。
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