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綾「もしまた何かありましたら今度は遠慮なさらずにすぐに私をお呼びください」
隣を歩く綾斗さんの眉は下がり切ったまま。そんな顔されると申し訳なくなる。
綾「美沙姫様がそういったことを苦手としているのは重々承知しておりますが…どのような状況下においてもです。どうかお願い致します」
重々が強調され、わがままを言っている気持ちになった。いや、言ってるんだけど。
あたしより年上だというのに、彼は深々と頭を垂れた。
美「えっそんなっ頭なんて下げないでください!分かりました!ちゃんと連絡しますから!」
綾「はい、有難うございます」
安心したように笑うけど、一体叔父さんになんて言われてるんだろう。そこまで心配しなくても良いのに。
その時ある事を思いついてポンと手を打った。
美「じゃああたしからもお願いしても良いですか?」
綾「はい、何なりと」
美「ご飯を一緒に食べたいです」
綾「……え」
美「こんなこと言ったら困らせてしまうのは分かってるんですけど、いつもじゃなくても。たまに、あたししかいない時とかだけでも良いんです」
だめ、ですか?と苦笑いを浮かべると綾斗さんは一瞬何かに耐えるように目を伏せ、もう一度開いた時には柔らかい笑みを浮かべていた。
綾「畏まりました」
寮の前に着き、周りにいた数人の生徒が中に入り、人気が無くなった所で綾斗さんは呟く。
綾「美沙姫様は本当に素晴らしい方ですね」
美「えっいきなりどうしたんですか?」
唐突な褒め言葉に瞬き目線を上げる。
けれどその先には目が合っているようでどこか遠くを見つめているような、悲しげな瞳。
綾「本当にいつも、優しくお美しく、 儚い」
美「綾斗…さん?」
まるで前からあたしを知ってるような口ぶりにズキンと響く。また、頭痛。
…そういえば、頭痛が起きる時って、すごく不定期。
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