第十九章

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凛「夜のな。そして明日は休みだ。そんなところで寝られたら邪魔だ。寝るなら部屋に戻れ」 確かめるように壁の時計と窓の外を見てホッと息を吐く姫野に呆れながらソファに腰掛ける。 美「わっごめん!いつの間に寝ちゃってたんだろう!綾斗さんもう帰った?」 凛「きっちりカップ洗ってとっくにだ」 うわ?申し訳なかったなあ…、とブランケットを畳む姫野に無意識に言葉が溢れた。 凛「お前と綾斗さんは奇妙だな」 え?と彼女は怪訝な目つきになる。 言った自分もバツが悪くて眉を顰めているのだが。 美「なにそれ?変な感想」 凛「…主従らしくない」 美「ふふ、それでいいんだよ。あたしはね、執事に何でも頼りたくないから」 畳まれたブランケットが置かれたソファの背に、この部屋に一人だった時のことを思い出す。 ずいぶん生活感のある部屋になったものだな。 キッチンも、リビングも、自分以外に一人増えただけで、こんなにも変わるものだろうか。 凛「ふん、あっちからしたらそれがもどかしいんだろうな」 その言葉に少し困ったような表情を見せた姫野。やっぱりそこらへんにいる執事と主とは違う。遠慮をしているというか、"お互いに"避けているような。 美「どうしたの佐渡凛、今日なんか饒舌」 自分でも不思議だ。他人のことなんてどうでもいいのに、こんな話を自ら持ちかけるなんて。考えているなんて。 ーーーー ソファでうたた寝をし始めた姫野に、ブランケットをかけている綾斗さん。複雑な表情を浮かべているのが目についた。 いつもにこにこ笑ってる彼にしては険しい顔つきだ。 綾『佐渡様、もし美沙姫様の体調が優れないようであったり、何か様子が変な場合は私にご連絡いただけないでしょうか。ワンコールだけでも構いません』 この人が話しかけてくるときはお茶を淹れたと言われるとき、姫野の様子を聞かれるとき、姫野を迎えにくるときの挨拶、姫野に伝言を頼まれるときなど、当たり前ながら姫野絡み。 どいつもこいつも姫野のことを俺に聞くな、とも思うが、実質物理的な距離が1番近いのは俺だ。つまりは理事長のせいだな。
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