第十九章

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水を汲んだコップを手に部屋へと戻り扉を閉めるとふっと力が抜ける。とっさにコップは机に置いたけれど少し溢れてしまった。 美「う…、」 痛い痛い痛い。 ダメだ、世間話でもしたら和らぐかと思ったけど、痛みはどんどん増していくばかりだった。 目を覚ましてすぐに痛みを感じた。嫌な夢を見たせいだろうか。 気を紛らせるために話続けていたって、気付かれてないよね? 綾斗さんが帰ってなかったらばれていたのかもしれない。その点は心底安心した。 美「薬、飲まなきゃ」 頭痛薬を震える手で口に含み水嵩の減ったコップを再び手にする。 疲労からくる頭痛。身体がそんなに疲れている実感はないけど、精神的にはそんなに参ってしまっているのだろうか。 "あの日々"を思えばそんなに衰弱している感じもしない。 こんなにも頭痛が続くのは初めてだった。 ベットに寝っ転がり額を腕で覆う。 美「そういえばこっちに来てすぐの時にも一度あったっけ」 屋上で、海流先輩と話をする前。 あの時は何を考えてた…? ズキン 美「いたたた、疲労ってことは寝れば少しは良くなるのかな」 体育祭が近いのに、こんなんじゃダメだ。 それにしても綾斗さん、よく気づいたなあ。そんなに見るからに元気なかったかな。 ズキンズキン 美「…ダメだ、早く寝て治さなきゃ」 これ以上迷惑なんて掛けられない。 子供の頃とは違うんだから、もう風間はいないんだから。 佐渡凛は女嫌いなのに、ご飯を作ってくれるし、お風呂も先に入れさせてくれ、門限まで気にしてくれている。 いや、門限は連帯責任とかになるのかもしれないけど。 "姫野"にいた時のようなきっちりとした生活ではないけれど、あたしはそれが嬉しかったりする。 決められた食事やティータイム。温泉かというくらい広いお風呂にエステ。それらも死ぬほど嫌だったわけではない。
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