第十九章

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遡ること、一週間前。あの雨の日の夜。 風「目が覚めましたかお嬢様」 見覚えのある天蓋に、肌触りの良いシーツ。 居心地がよすぎて居心地の悪いこの部屋に寝るのはいつぶりだろう。 何より、自分の意思で寝ていたわけではないのだけど。 美「こんな連れていき方、ないんじゃないの」 寝たままの体勢で周りを見渡すけれど、以前住んでいた頃とほとんど変わらないこの部屋に懐かしさは確かにある。状況が状況でなければ。 風「申し訳ありません。どうしても本日中にこちらに帰って来ていただく必要がありましたものですから。ご気分ははいかがですか」 美「最悪」 気分も何も、手刀入れられてすやすや寝れたものじゃないでしょう。 気を失うっていうのよ、それ。 美「…今何時」 風「7時前でございます」 美「2時間も寝てた…意識がなかったのね」 強めに言うとふっと目を伏せる風間。 悪びれる気があまりないのだろう。 美「それで?いつ帰らせてもらえるの」 風「そうですね、旦那様が良いと言うまで、でしょうか」 美「な、そんなの言うわけないじゃない!」 男子校に通ってるなんてまず知られた時点で強制的に連れて行かれなかったのさえ不思議だったのに、ここまで来て易々と帰らせてもらえるわけがない。というか天風学園にいることはどこ情報なの!? お父さんからちゃんと言ってあるの!? 叔父さんの学校だってのもちゃんと知ってるだろうし、あれ、これ私が怒られる理由はないよね?ないよね、多分。 風「心配せずとも、旦那様は空海様のところにいることは承知しておりますので、すぐに戻れますよ。お嬢様が言うことを聞いてくだされば、ですが」
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