5980人が本棚に入れています
本棚に追加
美「…何をさせられるのかしら?」
姫野が何を考えてるなんて分かりたくない。
どうせあたしにとって良いことなんてないんだから。
風「そんな、させる、だなんて。お願いをしているだけですよ」
全てが胡散臭く感じる。この部屋にいるとあの日を思い出して風間の顔を見たくなくなる。
白いベッドに横たわる自分がまるで病人のようで、なんだかここから出てはいけないと縛り付けられているような気がする。
風「ただいつものように過ごしてくだされば」
パーティでもあるの?でもあたしはパーティには出なくていい、いや出られないはず。
訝しげな表情のあたしとは別に風間は穏やかに笑った。まるで昔のように。
風「お嬢様、おかえりなさいませ」
そんな表情されたって、困る。
はあ、とため息をついて携帯を取り出すとすっと手から抜き取られる。
美「ちょっと、返してよ。叔父さんに連絡をさせて」
風「それには及びません。空海様は今回のことをすべてご存知です。もちろん、新しい執事、も」
美「綾斗さんも?どうして風間が?」
その問いかけに…いや、その前の言葉に、少し目が揺らいだように思えたけど一瞬すぎてわからなかった。
風「私はお嬢様の執事ですので」
この問答は無意味らしい。
美「はあ、別に逃げ出したりはしないわよ」
今回のことも他言するつもりはない、と言い切ると迷ったような表情を見せ口を開く。
風「では夜にはお返しします」
美「勝手に見ないでよね」
風「承知しております」
本家にいた時も前の家にいた時もそうだった。携帯はGPSとして機能し、習い事の時は決まって風間が所持していた。
習い事の時は、という表現はあまり正しくないかもしれない。だって学校から帰ったら夕食まで習い事、夕食後も習い事、土日だってほとんど一日中だったのだから。
みんなのアドレスが増えた今でも携帯を見る習慣がそこまでないのは昔からの刷り込みだ。
最初のコメントを投稿しよう!