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空港の外周で救援活動に参加している魔導師たちは戸惑っていた。
懸命な消火活動にも関わらず炎の勢いはまったく衰えず、それどころか勢いを増しており、さらに原因不明の魔力減退現象にも見舞われていた。
「ほの白き雪の王、銀の翼をもて、眼下の大地を白銀に染めよ」
夜の空に少女――八神はやて浮かび、はやての周りでゆっくりと回転する白いキューブが輝いていた。
「指定区画の退避完了です。お願いします」
「了解や!」
はやてが自分のデバイス――シュベルトクロイツを高く掲げると白いキューブの回転が早くなる。
「来よ、氷結の息吹―――」
シュベルトクロイツを振り下ろすと共にその名が唱えられる。
「アーテム・デス・アイセスッ!」
撃ち出されたそれは四方に散り地面に向かって進んで行き、地面に着弾すると雪と氷の大爆発が起こる。
消火は成功したが、救援活動をしていた魔導師が数名巻き込まれたのはご愛嬌で済ませていい問題だろうか?
「すみません。私一人やと、制御苦手で」
「いえ、気にしないで下さい」
息を白くしながら魔導師たちが炎が燃えていた場所を睨む。
魔導師たちの懸念は現実になる。消えたはずの炎が再び、いや、先ほどより炎を強くして燃え盛る。
同時に起こる魔力減退現象にはやては苦い顔をする。
「魔力減退現象っ!」
「AMFやない。まるで魔力が何かに食べられてるみたいや」
「どうしますか? 八神特別捜査官」
「もう一度や、消えるまで続けるで!」
はやての言葉に魔導師たちが一斉に返事をすると、少し折れかけていた心が持ち直す。
「それだと確実に君達が疲弊して終わりだ」
そこにそんな言葉が投げ掛けられ、同時にはやての頬にポタリと水が落ちてきた。
雨など降っていないので、上に何かあると感じたはやてが上を見上げる。
「雨流れ」
髪を靡かせながら紫苑が水の矛を投擲したのは、はやてが紫苑の姿を捉えたのと同時だった。
瞬間的に音速を超えた矛は轟音と共に地面に突き刺さる。
「呪いは消え―――た―――とは―――」
紫苑の身体がグラリと揺れ、頭から落下したのではやてが慌てて抱き留める。
そして紫苑の身体を見て自分の頬に付いているのが血だとはやては気付いた。
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