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『はやて!』
『フェイトちゃん!? ちょうど良かった!』
紫苑の状態に気付いたはやての頭にフェイトの声が響く。
その声は平常のものではなく焦りが多量に含まれたものだったが、はやても慌てていたためそれを気にしている余裕はなかった。
『『ちょうど良かった、怪我した男の子―――えっ?』』
声が重なったことに二人が驚く。
『白い髪で黒い服の男の子が―――』
『黒い服で白い髪の男の子が―――』
そこまで言って同じ人間のことを言っていることに気付く。
『えっと―――同じ男の子かな?』
『そやね―――ってそんな暢気にしとる場合ちゃう! この子、大怪我しとる!』
はやてが弱々しく呼吸をする紫苑に注意を払いながら周りを見渡す。
紫苑を誰かに引き渡して消火活動に戻るつもりだったのだが、顔を上げたはやての眼が捉えたのは赤から黒へと戻った夜の空だった。
「これ―――は? 火が消えとる?」
「八神特別捜査官!」
「何で火が消えとるんや?」
「わかりません。さっき突然火が消えました」
「魔力減退現象もなくなりました」
はやての周りにいた魔導師たちも何が起きたのか理解しておらず、ただ呆然としていた。
はやても原因を考えようとしたが、その思考を引き戻したのは紫苑の小さなうめき声だった。
「八神特別捜査官。ここはもう大丈夫ですから、その少年を救急隊に」
一人の魔導師の言葉にはやてが戸惑うように周りを見渡すと、その場にいる魔導師たちが全員笑みを浮かべて頷いた。
それを見たはやては礼を言いながら紫苑を抱えてその場を離れた。
はやての腕の中で紫苑は苦しそうに呼吸をしながら、それでも安心した表情で眠っていた。
少年と少女たちの出会いは終わり、今宵はこれにて一先ず閉幕。
物語が動き出すのはこれより4年後。
本来なら無い出会いと出来事が大きく歴史を変える。
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