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剣士と魔導師
Side Teama
私、ティアナ・ランスターがその光景を見たのは偶然だった。
ふと、何となく隊舎の外に出た私の耳に風を切る音が届いた。
その音に誘われるように私は足を進め、角を曲がろうとしたところで私の時間が止まった。
中庭の中心で純白の髪を靡かせ知らない剣を持った誰かが舞っていた。
手に握られた木刀の剣筋は素人の私でも解るくらい洗練されている。誰が見ても『美』と称賛されるような剣舞。
でも、なぜか私にはとても悲しく見えた。
「ティアーーー、もう少しで時間だよーーー」
止まっていた時間を動かしたのは私と一緒に機動六課に配属になったスバル・ナカジマの声だった。
思わず声のした方へ視線を向けるとスバルが叫びながらこっちに向かって来ていた。
「ティアー、どうしたの?」
「べつに何でもないわよ」
近くまで来たスバルにそう言うと小さくため息を吐く。視線を戻した時には幻の如く誰かの姿は消えていた。
それから隊舎に向う道は、何をしていたかを聞いてくるスバルをごまかしながらさっきのことを考える。
なぜ悲しく感じたのだろうか?
「あ」
小さく声が漏れたがスバルには聞こえなかったようだ。
なぜそう感じたのかわかった。
「剣が風を切る音が泣いているように聞こえたんだ」
「ティア、はやくぅーー!!」
「叫ぶなっ!」
私がその人物と再開するのは僅か数分後のことだった。
Side Out
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