始まりへ続く終わり

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死臭に支配された世界。 この世の終わりではないか? そう思ってしまいそうな場所を舞台に少年が舞っていた。 「っ―――」 少年が飛びのくと黒い刃が少年がいた場所に突き刺さる。 長い純白の髪を靡かせる少年の息は荒く、身体の至る所から血が滲み出ていた。 「そら、次だ」 辺りを覆う暗闇から声が響き、それに反応するかのように闇が蠢き、少年を捕らえようと触手を伸ばす。 少年が触手を避けると触手は地面に衝突する。 それは水のように広がって行き、近くに有った死体を飲み込んだかと思うと跳ねるように少年を追う。 「―――臥竜天醒」 少年が持つ二振りの刀に紅蓮の炎が生まれ、少年が回転すると炎の竜巻が生まれる。 炎は襲いかかる闇を――否、それは闇ではない。辺りを覆い、今焼け落ちているそれは数百億になろうかと言う蝿の軍勢。 たかが蝿と侮ることなかれ、それは魔の産物。人の肉を喰らう魔性。 現に先ほど飲み込まれた死体は腐肉を喰らい尽くされ白骨と化している。 蝿が炎に戸惑い動きを止めた一瞬で少年は体勢を立て直す。 (残存魔力は二割、体力は一割七分と言ったところか) 少年は呼吸を整えながら敵の姿を探すが、その姿を見つけることは出来ない。 さらに自身の限界、周り全てを蝿に囲まれると言う、絶望的な状況。だがそれでも少年の目から強い光が失われることはない。 (全ての蝿を吹き飛ばせば本体が現れるだろうが、それだけの出力―――) 小刻みに蝿の群れが襲い掛かり少年ね思考を中断させる、避けきれない蝿の群れは身体を削り血飛沫が上がる。 「やるしかないか―――炎よ」 少年の右手に握られた刀が真紅の光を放ち、その光が直視できないほど強くなると刀を地面に突き立てる。 「灰燼となれ―――煉獄」 紅蓮の光が世界を飲み込む。 光が消えると蝿が作り出していた蠢く闇は消え、廃墟の城、その王座の間で少年は荒く息を吐き ―――――軽い音と共に赤い華が咲いた。
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