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「ここからか?」
少年は身体を引きずるように声が聞こえた方に進み、螺旋階段へとたどり着く。
声は確かに階段の上部から聞こえ、少年は上を見上げる。
「スバル。スバルーー」
長い青髪の少女が壁に手を付き、時々煙で咳込みながらも人の名前を叫びながら必死に階段を進んでいた。
その少女の姿を見て『この世界』にあるのが人間の文明だと解り安堵する少年の視界が、金色の光を捉えた。
「見つけた」
螺旋階段へ進入した少女――フェイト・T・ハラオウンは探していた少女を見つけられたことに安堵する。
『サー、最下層にもう一人救助者を確認しました』
「えっ?」
フェイトが自分の相棒たるデバイス『バルディッシュ』の言葉に驚いて視線をさらに下へと動かしすと、白髪の少年とフェイトの視線が交わる。
二人の間にはかなりの距離がありお互いの姿を視認出来る程度であり、視線が交わることはありえない。
だが確かに二人の視線は交わった。
『サー、彼女のいる場所が崩壊します』
「あっ!」
フェイトがその出来事に気を取られていたほんの数秒の間に少女は危機に晒される。
少女が居た階段が崩れると、少女の身体は重力の鎖に引きずられ落下する。
慌ててフェイトが少女に向かうが、風を切る音と共に少女の姿がフェイトの視界から消える。
「えっ!?」
「大丈夫か?」
突如、後から聞こえてきた声にフェイトが驚きながら振り向くと、そこには先程まで下に居たはずの少年が少女を―――俗に言うお姫様抱っこで抱えて浮いていた。
思春期真っ只中の少女がそんなことをされればどいなるか? しかも少年は整った顔立ちをしている。
「―――は、はいっ!?」
「どうした?」
顔を赤くしてパニックになると言う当然の結果に陥る。
だが原因たる少年はなぜ少女がそんな状態に陥ったのか解らずに訝しげな表情を作る。
「あれは恥ずかしいよね」
それを見ていたフェイトは少女に対して小声で呟き、同情する。
少女の無事を確認した少年がフェイトへ顔を向け、フェイトは初めて少年の姿を正面から捉えた。
フェイトと同じ位の長さの純白の髪。纏う服はそれとは正反対の漆黒。強い光を宿す瞳は空がその中に在るような蒼。
そしてその眼に宿る光にフェイトは見覚えがあった。
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