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聞き慣れた声の主は
左手で軽く頭を掻くと、
ハイドから視線を空へと向ける
ハイドはそれを知ってか知らずか
もう一度淋しい空を見上げた。
「 やだ 」
吐き出した声は掠れていた
あからさまに不機嫌なハイドの声に
声の主、ケンは困った様に
鼻で息を吐いて 微笑む
「立ったほうが見やすいやろ」
ハイドは声に少しだけ眉を潜めると
ゆっくりと試しに立ち上がってみる
またどうせ座ってやる、と心で囁くが
成る程 立った方が視界が広がる。
目一杯の空 ビルも邪魔しない
立ってみれば。
「ケンちゃん?」
「何や?」
口に加えた煙草を手で囲って
火を付けようとしたケンは
そのまま止まった。
「帰るで」
その声に
カチッとライターの音を響かせれば
「おー 」 と優しくも曖昧な返事をした。
end
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