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「はい」
すがりつくような瞳に思考が停止してしまいそうだ。
私は、これが欲しかったのかもしれない。
『それなら、命令してもいいよね…飽きられれば終わりだけど、その瞬間までずっと私のそばに居てほしいの』
主である貴女のそばに居て良いのですか?
ギルは跪いて胸に手を持っていく。
「ずっと貴女のそばに居ります、蜜。
…嫌だと言っても離れませんよ?」
そう言って蜜を見上げる。蜜は涙をこらえて微笑んだ。
彼女は…私と比べるとかなりの子ども。
長い間孤独に耐え、異形に襲われ、異世界に一人連れてこられ…
…不安でないはずがない。
この無力な少女を護らねば。
自分を真っ直ぐ見つめる瞳。ギルは純粋に彼女を抱き締めたい衝動に駆られた。
…奴らに何を言われても構うものか。彼女は私を望んだ。
私が従う理由はそれだけで十分ではないか。
ギルは立ち上がると蜜に近づいた。
『ギルさ…』
後ろへ下がろうとする蜜の腕を優しく掴む。動きが止まった蜜をそのまま抱き締めた。
途端に香る甘い匂い。
細い首すじを見ないようにして囁く。
「私のことはギルと呼んで下さい。
…すみません。しばらくこうさせて下さい…」
小さな、それでいて心地よい声に蜜は徐々に緊張を解いていき、ギルに体を預けた。
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